モンスターを描こう!:モンスターの描き方・考え方講座

あとがき

完全に蛇足ではありますが、講座の締めくくりとして後書きをつけておきます。

当講座「モンスターを描こう!」は、筆者が学生時代の貴重な時間を使い2年くらいかけてダラダラと執筆してきたものです。その結果…というのもなんですが、個人的には良くも悪くも、モンスターがらみの講座としては抜群の充実度(※完成度ではない)になったと自負しています。しかしなにぶん私も素人ですので、「なんか説明がよく分からない」「ここをもっとこうしてくれればなぁ」という部分も色々あったかと思います。が、それでも何かしら得るものがあったなら嬉しいですし、もっといえば「モンスターを描くのって楽しいんだな」ということを感じるきっかけになれば幸いです。

さて話は変わりますが、ごく普通の人から見たら「モンスターを描く・考える」という活動はずいぶんマニアックに感じられると思います。なんたってどこにもいない生物を描くわけですから。しかし考えてみれば、怪物や妖怪の伝承は太古のから東西を問わず語り継がれていますし、絵としても相当な数の作品が残されています。写真もない時代、人づてに伝わった絵や噂話ほど想像を掻き立て、また生々しく感じるものはなかったのでしょう。昔はモンスターが絵空事の存在ではなく、まさにリアルな世界に生きる存在だったのかもしれません。 しかし現代は科学の時代。「そんなもん実在しねぇよ」と言われてしまう世知辛いご時世です(かろうじて幽霊くらいは生き残っていますが)。悲しいかな、科学技術の発展でモンスターたちは「リアル」な世界から「ファンタジー」の世界に追いやられてしまいました。

しかし、だからと言って我々モンスターマニア(?)が肩身が狭いと嘆く必要はありません。どんなに科学技術が発達しそうした怪物が実在しないと分かったとしても、モンスターとはもともと恐怖などの感情を具象化したものであり、何かしらのイメージと結びついて人間の心の中に存在し続けていることに変わりはないからです。言うなれば「人間のいるところにモンスターあり」です。そして各々の感情がどんなイメージに結びつきどのようなモンスターを生み出すのか、それはまさに人それぞれです。あなたの中にはあなただけのモンスターがいるに違いないので、ぜひともそれを大切にしていただきたいと思います。そしてできれば頭の中で持て余すだけでなく、ぜひそのモンスターを外に出して他の人に自慢してみましょう。きっとみんな逃げ出しますから(笑)

さて、モンスターを描くこと、もう少し厳密にいえば「オリジナルのモンスターを考えて絵に落とし込む」ことは、やればやるほど「奥が深いなぁ…」としみじみ感じる分野の一つです。というのは何といっても、モンスターデザインには他の分野にはない自由度があるからです(最後まで読んでくださった方には言わずもがな、でしょう)。しかし一方で、その自由度が仇となり本当の面白さを実感しづらい分野であるとも思います。そもそも「デザイン」自体が方法論的に説明しづらい分野ですし、さらにマイナーな上にすそ野の広い「モンスター」というジャンルにおいて、「何でもありです、さあお好きにどうぞ」と言われたって途方に暮れるだけでしょう。まあ、喩えるならアマゾンの奥地で新種の虫を1匹見つけ出すようなものですから(見つけ方や捕まえ方のコツが分かればハマっちゃうんですけどね!)。

そんなわけで、私のような好事家ならいざ知らず、ほとんどの人はその深みに足を踏み入れない…というか深みがあること自体を知る機会もないままです。もちろん、それでも一応「こう描けばかっこいいドラゴンが描けるよ」というような取っつきやすい(しかし型にはまり切った)やり方はたくさん目にしますし、それで楽しめれば十分だと言えなくもないです。…が、そのくらいで満足したような気にさせてしまうのは、フルコースなのに前菜で満腹にさせてしまうようなものだと感じていたので、正直「自分が講座を立ち上げるなら、もう少し頑張って深淵をちらつかせたいな」と思ってきたのでした。

そこで、Stage2以降では素人が思い切ってモンスターデザインについて思いのたけを述べさせていただきました。まあ全体的にとりとめのない解説だったり、作例を貼って終わりみたいなLvもありましたが、講座サイトにあるまじき「変なモンスター」に出くわしたこと間違いなしだったと思います(たぶん)。もしかしたら、これまで勝手にモンスターの定義を狭めていたことに気付き、「あ、こんなのもアリなんだな」と思って頂いた方もいらっしゃるかもしれません。そうであれば私の狙い通りであり、これぞまさに作者冥利に尽きる、というやつです。

…というわけで、最後までお付き合いいただきまして、本当にありがとうございました。もし何かご意見やご質問などありましたら、ご意見・ご感想フォームからお寄せいただけると嬉しいです。それから、私自身もまだまだ勉強中の身であり、講座の内容も改善すべき部分が多いのは自覚しています。その点については継続的に手を加えていきたいと考えていますので、どうぞ今後ともよろしくお願いいたします。これからもお互い頑張りましょう。

2015年8月 ブラック黒沢