モンスターを描こう!:モンスターの描き方・考え方講座

創作活動の敵「自己顕示欲」

今だから言えることですが、学生時代の私は自己顕示欲がものすごく強く、そのせいで悶々とした日々を送っていました。とりわけこの欲望が顕著に現れたのが創作活動であり、欲求が満たされないことに3年間も悩まされ続けました。今回はそのことを振り返って、自己顕示欲が創作活動にどのような悪影響を与えるのかを私の経験からお話しします。ぜひ、皆さんには私を反面教師としていただき、この厄介な欲望に振り回されないようにしていただけたらと思います。(2015 ⁄ 9 ⁄ 13)

1.自己顕示欲の弊害

創作活動において自己顕示欲が強くなりすぎてしまうと、主に次のようなデメリットが出てきます。

  • 創作の目的が本末転倒になる
  • 没個性的になる
  • 嫉妬しやすくなる

まず1番について。自己顕示欲MAXだったときの私は、自分の作品に対する評価ばかりが気になって少しも楽しめませんでした。いや、閲覧数とかが増えると確かに嬉しいのですが、気が付けば「今回はこんなに頑張ったのに全然見られてないじゃないか」とか「なんでアイツばっかりこんなに評価されているんだ」というようなことばかり考えていて息苦しく、しまいにはどんな手段を使ってでも数値を稼ぎたいと思ったほどでした。…本来なら作品作りを楽しみたかったはずのに、途中で目的が作品制作とは関係のない部分にすり替わってしまった。上記は私の経験談ですが、このように自己顕示欲が強いときには他人の評価が目に見える形にならないと満足できません。というか、悪化すると作品制作そのものはどうでもよくなり、「評価を表す数値」を稼ぐのが目的になります。創作活動が数値稼ぎの道具になるなんて、まさに本末転倒というしかありません。

次に2番については、「もっと多くの人に見てもらいたい」という衝動から受けが良い作品を作りがちになります。多くの人に見てもらえる作品とは、より多くの人の好みにマッチしている作品のことです。そのような作品を作ろうとすれば、(自分自身の好みかどうかに関わらず)より「一般的な」好みの基準に合わせるしかありません。まあ元々の作風が多くの人に好まれるタイプなら別ですが、私のように一癖あるタイプならば流行りの作風に合わせるといった大幅な方向転換を余儀なくされます(幸い、この点については「俺の作風じゃない」と踏みとどまりましたが)。しかし単に「目立ちたいから」というような、絵に直接関係のない理由で作風を変えるのは本来の持ち味を殺してしまうことになりかねません。とりわけ自由度が高いモンスターデザインにおいては、そのようなつまらない理由で没個性的になってしまうのは非常にもったいないと思います。

最後に3番についてですが、自己顕示欲の一番の弊害は嫉妬しやすくなることです。以前の私もそうでしたが、人間は嫉妬に狂うと他人の足を引っ張ることしか頭になくなり、当然その間は自分の技術を磨くのが疎かになります。その結果比較している人との差がさらに開き、ますます憎悪がつのる…というような悪循環に陥りかねません。嫉妬すると自分自身苦しいですし進歩もなく、さらに嫉妬される側にとっては迷惑極まりないです。楽しいはずの創作なのに誰も得しない…こんなに悲しいことはないと思います。

2.自己顕示欲にとらわれないために

以上の経験も踏まえて、私が自己顕示欲から解放されるきっかけとなった考え方を三つ提示しておきます。

  • 自分は特別ではない、ということを自覚する
  • 他人と比較しすぎないようにする
  • 自分がやりたいことを思い切りやる

自己顕示欲が強い人は自分は特別だと思っています(特別だから目立ちたい、他人より目立つはずだと感じる)。そこでまず必要なのは、自分は決して特別ではないことを自覚することです。そのためには世界的なアーティストの作品に触れて己の小ささを知るのが良いでしょう。狭いコミュニティの中しか知らないから自分が特別だと思ってしまうのです。そんなくだらない自尊心なんて叩き潰してしまいましょう。もし、ここでコテンパンに打ちのめされても大丈夫です。人間は自分が下手だということを自覚してこそ上手くなれるものですから。

二つ目に有効なのが、自分を他人と比較しすぎないこと。自分の至らなさを顧みて奮起するなら比較することも創作の励みになりますが、ほかの人のバックグラウンドを無視して自分と同じ土俵で比較しても不幸になるばかりだということに気づきました。あくまでも「人は人、自分は自分」ということを肝に銘じましょう。それから、自分の作品の評価はまず自分で下すことも忘れないようにしてください。自己満足というと聞こえは悪いですが、まず自分で自分を満足させることができなければ他人の評価に振り回されるばかりです。自分自身が納得できるような作品になればそれでよし、くらいに考えましょう。他人の評価なんてあくまでも作品制作のスパイスにすぎません(もっとも、作品ではなく「商品」を作るなら話は別ですが)。

最後に三つめについてですが、不自然に万人受けを狙うくらいなら自分が本当にやりたいことをやりましょう。作っていて楽しかったなら、たとえその作品が他人に理解されなくてもいいのです。自分が楽しむために創作活動をしているなら、まず自分自身が楽しめることをやるのが自然でしょう。…この考えに至るまでにずいぶん苦労したな、と思います。まあ自分で楽しんだついでに誰かが楽しんでくれればもっと嬉しいのですが、それはあくまでも副次的な結果です。個人レベルであれば「自己満足のために作ったが、たまたま評価された」というのが自然ですね。というのも「狙い通り人を喜ばせる」というのは高度なテクニックであり、企業でも苦戦しかねないことですから…。結局のところ、趣味であれば評価されやすいものを作ろうとするのではなく、作りたいように作るのが正解だと思います。