モンスターを描こう!:モンスターの描き方・考え方講座

モンスターデザインのための解剖学1:骨格と筋肉の基礎

モンスターを描くのに慣れてくると、ふとリアルなモンスターを描きたくなってくると思います。 そこで必要になるのが解剖学の知識です。 今回は簡略化した解剖図で動物の体の基本構造を覚えましょう。(2014⁄8⁄26)

その前に…なんで解剖学が必要になるのか

次の絵を見ていただければ一目瞭然でしょう。
解剖学を考慮したかどうかの比較イラスト
左が解剖学をあまり考慮せずに描いたもの、右はその逆です。 明らかに右のほうがリアルに見えると思います。

ではなぜ左のほうはリアルに見えないのでしょうか?それは、生物の体のラインは左の絵のように単調ではないからです。実際には骨や筋肉によってできた美しい凹凸があります。これがリアリティの源泉です。そこで解剖学によって体の仕組みを理解し、その知識をもとに「実際の生物らしい」体のラインを再現できるようにしよう、というのが今回の目的です。

解剖学は難しい?

さて、解剖学と聞くとなにやら難しそうですよね。しかしお医者さんになるならともかく、絵を描くのに使うだけなら覚える量は大したことありません。大まかな骨格の形と筋肉の付き方が何となく分かればOKです。

ところが一つ問題がありまして、そもそも「絵を描くのにちょうどいい情報」があまりないのです。 これまで色々な参考書を見てみましたが、骨格や筋肉をやたら詳しく描いている本が多くて理解しづらいなと思っていました。私としては「だいたいこうなってる」というザックリした感じを知りたいだけだったのですが…。

というわけで、仕方なくwasa6なりに簡略化した解剖図を作っちゃいました。 まあ、趣味でかじっただけなので内容の正確さは保障できかねますが、 モンスターのデザインにちょっとリアルさを加える程度なら十分役立つと思います。 それでは早速みていきましょう。

1.人間(八頭身の場合)

1-1.骨格&筋肉

ヒトの骨格 ヒトの筋肉
上のイラストは「マッチョな八頭身の男性」の骨と筋肉を大雑把に描いたものです(※骨格のほうの「○」は主な関節)。 専門書ではかなり細かい部分まで描いてあったり、覚えさせる気のないような専門用語が並んでいたりしますがそういうのは省略しました。モンスターをデザインするだけなら細かい部分はどうでもいいのです。とにかく関節の位置や筋肉の流れを掴んでください。あとはそれをベースに体を組み立てて、各パーツを縮めたり伸ばしたり(変形のページ参照)すればそれだけでモンスターっぽくなります。

1-2.完成図

マッチョ兄貴
こちらが皮膚をかぶせて整えた最終的なイラストです。1-1のイラストではもっと筋肉の凹凸がハッキリしていましたが、実際にはその上に脂肪や皮膚が重なって滑らかになります。今回は筋肉質・贅肉なしの兄貴がモデルなので上のようになります。ただし、どのくらい筋肉や骨格が目立つかは体型によりけりです(太っていれば脂肪で覆われ、痩せていれば骨が目立つ)。臨機応変に対応しましょう。

このような人体解剖学の知識はリアルな人型モンスターを描くときには必須です。もう少し詳しく知りたいという方には、「アーティストのための美術解剖学」という参考書をおすすめします。

2.ウマ

2-1.骨格

ウマの骨格
馬の場合、特に足まわりの見た目が人間とは大きく違います(ただし基本構造は同じ)。肩甲骨が背中ではなく横についていることや、かかとが高い位置にあり逆関節になっていることに注目してください。前足も後ろ足も、各関節の高さはほぼ同じと考えてOKです。

またイラストにも書いてありますが、胴の高さとヒザから下の高さは大体同じか、後者のほうがやや高くなります。サラブレッドなど足の速い馬ほど足が長いです。覚えておきましょう。

2-2.筋肉

ウマの筋肉
足の付け根はかなり筋肉質です。しかし末端に行くにつれてだんだん細くなり、手首以下はほとんど筋肉がありません(代わりに強靭な腱がある)。荷引き馬などがっしりしている馬の場合は、足先も太めに描くとそれっぽくなります。

2-3.完成図

ウマ
馬は贅肉が無いため最終的な外見でも筋肉や腱の凹凸が見えます。まあ、あまりにムキムキに見えるのはそれっぽくないのでここでは目立たせすぎないようにしました。モンスターにするならマッチョなのも十分アリですし、描いていて楽しいと思います。

3.ライオン

3-1.骨格

ライオンの骨格
ライオンも四足歩行獣という点では馬との共通点が多いです。 しかし足の長さの割合は馬のときよりも短く、全体的に横長に見えます。 …あと余談ですが、個人的にライオンの頭蓋骨はとてもカッコいいデザインだと思います。機会があればじっくり観察してみるのをおすすめします。

3-2.筋肉

ライオンの筋肉
ライオンは筋肉が発達していてがっしりしています。描くときは肩の辺りの筋肉がごちゃごちゃしていて難しいです。

3-3.完成図

ライオン
あとはタテガミを被せれば完成。鬣いいですよね鬣(あ~、もふもふしたい)。カッコいいタテガミはモンスターのデザインの良いアクセントになると思います。それからライオンは多少脂肪がついているイメージなので、筋肉の隆起は示唆する程度にとどめてもいいかもしれません。

以上、簡単な解剖学の解説をさせていただきました。ちょっとサンプルの数が少なくなってしまいましたが、哺乳類や爬虫類くらいのレベルであればどの動物でも基本構造は同じです。骨格や筋肉の大体の感じを掴んでおくのが大事です。

(参考文献)

解剖図の作成にあたり、以下の書籍を参考にさせていただきました。